くるくる回る

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くるくる回る

やってしまった! 同居犬がいるから、こんなことになったのだ。 おれは先にごはんをもらいたくて、くるくる回った。 すごく目立ったので、先にごはんをもらえた。 次の日も、その次の日も、くるくる回った。 やっぱり、先にごはんをもらえた。圧勝だ。 横目で悔しそうにごはんを待つ同居犬のダックスフント。 その長い胴では高速回転は不可能だろう。 おれのような俊敏なビーグルに生まれたかっただろうな。 くるくる回る特技をあみ出した自分をほめてやりたい。 しかし、最近ごはんがうまくない。 どちらかというと吐きそうだ。 食前にくるくる回ったせいだろう。 それでもくるくる回ってしまう。 これって、どうやったらやめられるの? 条件反射から抜け出せない。 最初はくるくる回ることは手段だった。 同居犬より目立つための。 先にごはんをもらうための。 でも、今ではおれの脳に組み込まれてしまったようだ。 ごはんの時間になると、体が勝手に回り出す。 おれはバカなのか? 「おい、今日はやめろ。くるくる回るな!」 何度自分に言い聞かせても、ごはんの準備に脳が気づくと回ってしまう。 同居犬より目立つ手段なら、他にもあっただろうに……。 飛び跳ねるとか、足にすり寄るとか。 どうして、くるくる回ったのか? 「やってしまった!」としか言いようがない。 そして、おれの『ブラック』という名前が変わった。 渋い名前で気に入っていたが。 新しい名前は『クルクル』。 フン。 まあ、名前なんてどうだっていい。 だれか、このくるくる回るのを止めてくれ! (了)
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