何に見える?

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会社終わり、お酒を買って家でゲーム実況をみて なんとなくこのまま1日が終わるのが嫌だったから でかけてみた。 夜の街は空気が冷たく、人がいなくて 世界が自分だけのものになったような気がして好きだ。 ところどころヒビが入ったコンクリの道を踏み 空気を思い切り吸い込みながら走る。すると 前方ー……ゴミ捨て場になにかが見えた。 揺れるふたつの長いもの。 なにか得体のしれない生物な気がして、私は数歩下がる。やっぱ女ひとり夜にランニングは危なかったかな。 『そこのお嬢さん』 「え?は、はい」 その生物は姿をあらわした。でかいうさぎのようだ うさぎならよかった、とはならない なぜ喋っているのか。 ソレ、は聞いてくる。 『月の模様、あなたは何に見えます?』 「え?……餅をつくうさぎとか?」 『はあ、またか……ええそうなんです よくそう言われんですよでも餅をつきつづけて何年か、もう手も限界ですし ついた餅を食べるうさぎに見えるわ という説を流してくれるわけでもないので、私は永遠にたべることのない餅をつきつづけている』 「……はあ」 急になんの話だろうか。 冷えてきたしもう帰ろうかなと思っていると 適当でいいから月の模様が何に見えるか考えてほしいと言われた、が まあ、変な人に関わりたくないし都会の人は、つまり自分はそういうの冷たいので 「はは、それじゃ」 適当にランニングして帰った。 帰って風呂入ったあとの濃厚バニラは美味しく 「明日会社嫌だな〜」 そんなことを言いながら、その出会いを忘れ、歯を磨いて寝てしまった。 しかし ソレ、は月夜にいつもあらわれ 時にはうさぎ以外、カニ、ロバ、ライオンになっていた。 さすがに私も興味がわいてくる。 興味具合でいえば最近新しくオープンしたドーナツ屋が1位、こいつは15位くらい。 「よかったじゃん、餅をつくうさぎ以外になれて 海外ではライオンに見えるとか女の人に見えるとかあるみたいだね」 『けれどこうも説がバラバラだと 私はいつまでも自分の形が決められなくて不安なんですよ 誰かお前は絶対この形だと 他の誰がどういってもそうなのだと 力強く決めてくれれば……』 ソレ、はその日は本を読むおばあさんと化していた。 「ちょっと調べたけどうさぎはお釈迦様の前の姿らしいよ なんか知らないけどすごいじゃん 満足すれば?」 『自分はもう人にあれこれ言われたり 見守ってくれるとか尽くしてくれるとかそういう存在じゃなくて自由気ままに過ごしたいんです』 「ふうん……」 実際、月の模様は私にはなんの模様にも見えないんだけど 昔の人はよく色々想像したものだ こういうと炎上しそうだけど、娯楽が少なかったのかな? 「えーとじゃあ、私にはあの月の模様が ……なぜか私のことが好きな顔の良い男に見えるかな」 いい加減ソレと関わるのも面倒になり、適当にこたえるとソレは姿かたちを変えー…… 私好みの顔に、イケメンになった。 イケメンはゆっくり微笑む 「ありがとう、君の説が…… 一番自由に過ごせそうだ 好きだよ」 「うわっ、本当になった」 その後ソレ、は好きに食事したり遊んだり 時には働いたりして私の彼氏となった。 一番困ったのは、両親に紹介する時だ 「二人はいつ出会ったの?」 「月夜の遭遇って感じかな」 「ああなんてロマンチックなの うまれはどこの人?」 「それが……月の模様の見え方の擬人化というか」 「なんて?」 いや、本当私にもわからない end
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