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感傷に浸っている暇なんてなかったわ。
「ひな、おばあちゃんが買ってきてくれたシャボン玉があるよ。お風呂でやってみる?」
「シャボンだま? やるー! ひなね、おっきなシャボンだまつくるの!」
ホッ。祖母が花まつりの縁日で買ってきてくれたひなへのお土産が役に立ったようだ。
長風呂になっちゃいそうだけど仕方がない。
泡風呂は後の掃除が大変だから、シャボン玉で釣れて良かったわ。
それから大急ぎで喪服を脱ぎ、ひなをお風呂に入れた。
案の定、満足な大きさのシャボン玉ができるまで上がろうとしないひな。
根気よく待っている間に、こっちがのぼせそうだった。
八時を迎える前には、もうひなは夢の中だった。
一日が長かった。私も今日は早く休もう。
同居の祖母が亡くなったということで、就業規定通り明日まで忌引きをもらっている。
でも明日はやることがいっぱいだ。お休みをもらえている間に、祖母の遺品整理をしてしまうつもりだった。
「疲れたー……」
ふと食器棚を見ると、炊飯器とオーブントースターの間にカラフルな何かがあることに気づいた。
ダイニングテーブルの私が座る定位置から、真正面に見えるところだった。
近づいて手に取ってみると、それはどんぐり飴が入った可愛い瓶だった。
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