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「男性って、甘い物が苦手な方、多いのかしら。父もそうなんですよ。私からしてみれば、人生損をしているような気がしますわ。甘い物が食べられないなんて」
男性? 今、この人、私に向かって男性って言った?
それとも一般的なお話を私に振っているの?
一体誰なんだろう……この人。
状況が全くわからない。これは夢?
今日はおばあちゃんを送って疲れているから、いつの間にか寝ちゃったのかしら。
それにしてもリアルな夢……。
「……やさん? ……かやさん?」
ん?
「鷹也さん? どうされたんですの? 突然ボーッとされて」
「へっ? たかや……?」
なんで鷹也? さっきも男の人って……。
そこで私は自分の手元を見た。
細長いけれど、筋張った指。明らかに男性のものとわかる手が目に入る。
……この手、見たことある?
そしてジャケットの袖口からは、ヘルメスのカフスボタンがのぞいている。
「嘘……」
もう一度右側を見た。今度は夜景を見るのではなく、ガラスに映っている自身の姿を見るために。
「た、かや……?」
暗いガラス窓に映った自分の姿に驚きを隠せない。
私は思わず顔に手をやった。
嘘だ。あり得ない。さっきまで自宅でどんぐり飴を食べていたのよ?
そんな私が、どうして鷹也になっているの!?
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