高校時代

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 一見無愛想で、感謝の言葉を受けるのが面倒だとばかりの態度だったが、私は見逃さなかった。鷹也の耳が赤くなっていたことを。  あれは保育士の感謝の言葉が照れくさかったのだろう。  隣の席に座っている鷹也とは必要最低限の会話しかしたことがなかったけど、このことをきっかけに彼を見る目が変わった。  この人は正義感と優しさを持ち合わせた人なんだと。  森勢鷹也という人を私はその時初めて意識したのだ。  次の日、どうしても感動を伝えたくて、昨日の出来事を話してみた。 「げっ……お前、見ていたのか……」 「フフフ、なかなか格好良かったわよ。森勢くんのヒーローっぷり」 「なっ……やめろ……」  あれ、今日はわかりやすく赤くなっているわ。なんだか可愛い。 「からかっているわけじゃなくて、本当に感動したの。あの小さな男の子の命を救ったんだよ。自慢してもいいくらいじゃない」 「別に……誰かが危ない目に遭っていたら、助けるのは当たり前のことだろう」  確かにそうだけど、そんなにとっさに体が動くものじゃない。  当たり前だと言い切るこの人は、いい人だなと感心した。
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