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だいたい、『杏子(あんこ)』なんて、ふざけた名前だし。
クラスの女どもが「あんこ」と呼んでいるのを聞いて、ニックネームなのかと思ったら違った。
『『わくいきょうこ』じゃないのか?」
「『わくいあんこ』だよ」
「……甘そうな名前だな」
「そうなの! 可愛くて気に入っているの。おばあちゃんが付けてくれたのよ」
甘いのは苦手なんだが……。と思いながらも「……いい名前だな」と言ったら「鷹也って名前も格好良くていい名前だね!」と返されたことがある。
杏子の明るくてポジティブなところが俺にはなくて、妙に惹きつけられた。
女の名前を可愛いと思うなんて、初めての事だった。
女は鬱陶しいものと思っていた俺だったが、杏子だけは違った。近くにいても全く気にならない。むしろ傍にいるのがあまりにも自然で居心地が良かった。
いつのまにか杏子には心を許していて、俺たちはごく自然に距離を縮めた。
そして一学期の終業式の日、学校の近くの神社で夏祭りがあることをたまたま知ったのだ。
「行ってみる? ……今日、夏祭り」
それが精一杯の誘いだった。
クラスメイトから、特別な関係への第一歩目。
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