どんぐり飴の思い出

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「これ、ましゅかっとかな……」 「マスカット?」  袋を見ながら、消去法で味を当てようとする。 「なんだよ。味がわからないのか?」 「らって、ろんぐり飴って色れ味を感じりゅの……」  食べたことがなかったのでよくわからないが、普通は色に関係なく味ってわかるのではないのだろうか。 「色、わかりゅ?」  そう言って、杏子は口をすぼませて薄緑色の飴玉を俺に見せた。  まるでキスをするかのような形を作って……。  その一瞬で俺の理性は吹き飛んでいた。  おもむろにかがみ込み、顔を傾け、杏子に口付けた。 「ん!? んぁ……鷹也!」 「……色はグリーン、味は……マスカットだな」  俺は飴玉を奪い取って、味の感想を言った。 「な、な、な……」 「……甘いな」 「キ、キ、キス……」 「あ……俺、甘いの苦手だったわ」 「へ?」  真っ赤になってパニックを起こしている杏子に顔を近づけ、俺は再び飴玉を杏子に戻した。もちろん口移しで。 「んぐっ! ちょ……」 「…………な? マスカットだろう?」  無事に飴玉を口移しできて、俺はニコリと笑った。  杏子は真っ赤な顔をし両手で口を隠しながら、固まってしまっていた。  ちょっとやり過ぎたか?  でもキス顔なんて見せる杏子にも責任があると思うんだが。
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