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サイドテーブルのデジタル時計を見ると午前5:55だった。
ゴーゴーゴー……。
まるで早く行け、早く帰れって言われているみたい。
「飛行機、何時って言ってたっけ……」
商社に勤めている鷹也は、海外研修のためロサンゼルスへ行く。
最低でも三年は戻らないらしい。
部屋の片隅には大きなシルバーのスーツケースが置かれていた。
「午後便としか聞いてないな……」
午後の早い便だとしても7時に起きれば間に合うだろう。
そう判断した私は、ベッドサイドのアラームを午前7:00にセットし、そっとベッドを抜け出した。
この狭い部屋でシャワーを浴びるつもりはない。
彼を起こしたくないし、ましてやこの一夜を共にした気まずい朝に、どんな会話をしたらいいかなんてわからない。
私はやり直したかったのだろうか。
でもやっていける自信はある?
わからない……。
流された昨夜と違って、冷静に考えられる今は不安しかない。
あの人の言う通り、私たちはあまりにも違いすぎたから。
床に脱ぎ捨てられた服を身につけると、テレビボードに置かれたスマホが振動していることに気づいた。
鷹也のものだ。
アラームかと思い取り上げてみると、メッセージアプリの通知が立て続けに入ってきた。
ポンポンポンと5件。全部同じ『光希』と表示されていた。
「……光希(みつき)さん?」
そういえば昨日も抱き合っている間、何度かスマホの震音を聞いた気がする。
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