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祖母の死
祖母が死んだ。
幼い頃に母を亡くした私を、父と二人で育ててくれた祖母。
私、和久井杏子にとっては祖母であり母親代わりでもあるかけがえのない人だった。
「杏子、そろそろ行くよ」
「お父さん……」
祖母の火葬が終わり、初七日も終えた。遺骨と位牌は父に持って帰ってもらうことにした。
私の手元に残ったのは、祖母の小さな遺影だけ。
先祖代々のお仏壇は父の家にある。20年前に亡くなった祖父の位牌ももちろんそこにあるわけだから、祖母の位牌も横に並べてあげてほしい。
ずっと私の傍にいてくれた祖母が、やっと愛する人の元へ逝くことができたのだから。
「これから一人で大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫」
「杏子ちゃん、何か手伝えることがあったら言って? いつでも飛んでいくから」
「知美さん……ありがとう。いつもすっごく頼りにしてるよ」
心配そうに私の手を握ってくれる父の奥さん。
本当に優しいいい人と結婚してくれたなぁ。父は幸せ者だ。
若くして妻を病気で亡くした父は、亡くなった祖母と二人で私を育ててくれた。
母がいないことなど感じさせないくらい全力で私を育ててくれた。
そんな父が、知美さんと出会ったのは私が高校1年生の時。
父の経営する小さな町の工務店に事務員さんとして入社したのが知美さんだった。
父とは20歳も離れた年の差婚。
知美さんは私の6歳上だから、現在35歳。義母というよりはお姉さんのような存在だ。
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