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朝比奈は時計をちらりと見てからそう言って、飲み干した空のマグカップを水道においていた。俺も準備しないと、もういい時間になっている。
部屋に戻り、スーツに着替える。ネクタイを締めて、髪をセットする。顔を見ると、輪郭と鼻筋が親父のパーツで少し嫌気が差した。鏡を見ると、いつもこうなる。
もっと、凛々しい顔つきになりたかった。池先生くらい強面のほうが、絶対にかっこいいだろ。
持ち物はそんなにないが、リビングでコートを羽織り、ご祝儀や、貴重品の最終チェックをしていると、朝比奈もドレスに着替えて出てきた。
朝比奈の好きそうな可愛い花がらのドレス。いつもシックな色合いの、カジュアルな服しか選ばないくせに、本当は可愛いものが好きなんだよな。
俺の姿を確認すると、大きな目を更に大きくして驚いていた。
「なんだよ、どっか変?」
「………いや、和泉じゃない人に見えた。どなたですか?」
「うるせーな。けばいお前こそ、どちらさまですか?」
綺麗な姿をする朝比奈を見ていると恥ずかしくなって、誂う言い方をした。売り言葉に買い言葉………でもあるか。
「貴方の同僚の朝比奈ですけど」
べーっと舌を出していた。
「はいはい、そうですか」
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