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私は対面する椅子に座り、マグカップに視線を落とした。
ちゃんといわなくちゃ…。
「…………あのね、和泉に言わなくちゃいけないことあるの」
「なんだよ?」
「………好きな人ができたから引っ越ししようと思ってる」
頭の中で何回も練習してきた言葉、だからスムーズに言うことができた。
和泉はマグカップを置いて、私の顔をじっと見つめてくるヘーゼル色の瞳は、何かを見透かしてきそうで怖い。お願いだから、私の気持ちを見透かさないで……。
「________ここ二ヶ月くらいお前の様子が変だったのは、そのせいか……」
「……………あと二年はいるって話だったけど、いるつもりだったけど………。やっぱり好きな人いるのに異性とルームシェアはさ……」
「……見込みはあるのか?」
「ないよ。それに、和泉は知ってるでしょ?私は両親みたいになりたくないの。恋愛に振り回されて、人生棒に振るのなんてまっぴらなの。だから告白するつもりもない。でも、好きな人がいるんだから、和泉との関係は、全部終わりにしなくちゃと思って………」
「____あぁ、だから昨日………素直に従ったのか」
____それは違う。好きだから名前を呼んだの。
そう心では言えるけれど、口には出せない。
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