3693人が本棚に入れています
本棚に追加
これ以上一緒にいて、戻れないくらい好きになるのは怖いの………。タイミングは、今しかない。
和泉は冷たくて儚げな表情をしていた。
「………セフレも、同居もおしまいにする。二年早くなっただけで、もともと終わらせる関係なんだもん……」
ちゃんと言えた。言えたのに泣きたくなってきた。半分は嘘で半分は本音。セフレも同居も、終わらせなくちゃと思ってたのは本当だけど、続けられるなら今だって続けたい。
でもそのためには、この灯ってしまった気持ちが邪魔をしてくる。
「_______そうだな。お前はずっと俺のこと好きじゃないくせに一緒にいて、体の関係をただ惰性で続けてただけだもんな」
和泉は私の顔を無表情でじっと見つめていた。
言い方に棘があって、ぐさりと心を刺される感覚に陥る。でも、それをちゃんと聞き入れなくてはいけない。
いじわるでも、その中にある優しさが、本当に弱ってるときに隣りにいてくれる安心感が、私を孤独から救ってくれた。
でも、それにすがれたのは、和泉を好きじゃなかったから。
今は無理。
和泉の行動全部が、好きでたまらなくなる。
私は視線を落として、和泉から投げかけられるかもしれない罵声に構えていた。でも、返ってきた言葉は事務的なものだった。
「好きなやつできたら出ていくって話してたもんな。それで、いつ出ていくんだよ?」
「3月中旬には引っ越そうかなって」
「わかった」
無表情でそういって、マグカップのお茶を飲み干していた。
和泉は、好きな人が誰なのか、詮索してこなかった。私が泣きたくなるのはお門違いなのに、泣きそうで立ち上がって部屋に戻り、声を上げないように泣いた。
最初のコメントを投稿しよう!