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完全に忘れていたことを、思い出してしまった。
嫌だな。親族の挨拶まで、俺が行く意味はないと思ってる。家族という括りにされているんだから仕方ない……継母のことだけ気がかりだった。
冷めていく俺の顔を、朝比奈は伺うように覗き込んできた。
「無理していかなくていいのに」
「行くだろ。参加に丸つけた時点で覚悟は決まってるんだよ。たった四時間程度どうってことねーよ」
「4時間てさ、1日の1/6だよ?長くない?それに移動とかこみこみで考えたらもっとあるじゃん。そんなに拘束されるのに、わざわざ行きたくない式に参加するのもったいないよ。ご祝儀だって直接式に参加して渡す必要ないしさ…………」
こいつ、人の覚悟が揺らぐような本当のことを………。そんなのもうだいぶ前に考えて、バカバカしくなるから考えるのを放棄したことだ。
「お前、そういうこというなよ。結婚式行く直前に言うセリフじゃないだろ」
「ごめん、つい」
こういうところ、嫌いじゃない。
それに、朝比奈がいくなら行くと言い出したのは俺自身。こいつがいれば、行きたくなくても、まぁ少しは楽しくなるかなと思えたからだ。
「まぁいいけど………」
「わたし、そろそろ準備する。コーヒーありがとう」
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