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その場で立ち止まっていると、こちらに振り向いて視線があってしまった。
お母さんは、今まで私に見せたことのない優しい顔で近づいてきた。最後に見たのは六年前。昔から老け知らずで、綺麗な容姿をしているけれど、今も変わらない。清楚なワンピースに身を包んで、美しさは顕在だった。
どうしてここを知ってるの?
どうしよう………。
「誠、引越し先も何も教えないで、ずっと探してたのよ?」
立ち止まっている私に、近づいてきた。
「………なんで今さら……?」
「今まで悪かったと思ってるの。これからは誠と一緒に生きていきたくて……助けてほしいの」
そういって、私の肩に触れて抱きしめてきそうになるので、後ずさる。
「………近くにカフェあるから、詳しくはそこで聞く……。ついてきて」
私は方向転換をし、そのまま繁華街にあるカフェに足を運んでいった。お母さんは、後ろからついてくる。近くにあったチェーン店のカフェに入り、コーヒーを二杯頼んで席についた。
「どうしてここにいるの?」
「だから、誠にあいたくて来たのよ」
「………会いたい?」
そんなこと、生まれて初めて言われた。嬉しくなんてない。もうこの人に期待なんてしてないから。
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