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「いや、いまから行くのって挨拶でしょ?変じゃない?メイクくずれてない?服、めちゃくちゃカジュアルなんだけど……、失礼じゃないかな?」
大真面目にそう言ったのに、和泉はクスクス笑い始めた。
「大丈夫だろ。墓参りなのに、そこまで気にするか?」
「するよ、見てるでしょ!絶対見に来てるよ。大事な息子が、変なやつ連れてきてないかは、絶対に確認するよ」
千明は私の顔をじっと覗き込んで、そのままキスをしてきた。驚いて触れている瞬間に大きく目を見開いてしまった。すぐに離れると、千明は大人しくなった私を確認して、シートベルトを締めていた。
「今日は軽い挨拶だから、また改めてくればいい。母さんは、格好で人を判断するような人じゃなかったから、誠は絶対大丈夫」
車を走らせながら、千明はそういった。
助手席からちらりと千明の横顔を見ると、見慣れた顔なのに、よりかっこよく見えてしまう。
好きとは、こんなにも人を変えてしまうのか……。
「五島列島の海も、山も綺麗だろ。夏はよく川でも海でも友達と一緒に遊んで、池先生の診療所に入り浸ってた」
「千明はここが好きなんだね」
GWに、いつも一人でどこかに行ってるのは知っていた。でもそれだけで、こんなこと大切なことをしてるとは思っても見なかった。
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