挨拶

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 外に広がる景色は、昨日と同じようにコバルトブルーの海がキラキラと輝いていて、青々とした山々が海から連なって見えていた。うっとりするくらい綺麗な景色が広がっている。 「故郷だからな」 「戻ることとか考えてるの?」 「………いや、母さんと池先生に、沢山の人を救える医者になるって約束したんだ。  沢山の人を明るく照らせるように、そういう意味で名前をつけたからって………。それに、病院を継ぐって親父と約束したからな。その約束のかわりに、学生時代は医大までの学費やら生活費やら援助してもらってたし。医者になりたいって夢のためには、それがベストだって、10歳の俺はそう思ってたから、島に戻るとか考えたことなかったな…」  冷静にそういう千明は、前をじっと見てハンドルを動かしていた。なるほど、千に秋じゃなくて明るいのはそういう意味だったのか……。  千明は余裕そうに見えてるけど、きっとここまで我武者羅に頑張ってきたのだろう。 「……そうなんだ」 「…社会人として、やっと自立できるようになってきた。でも俺はまだ未熟だから、もっと技術も実力もつけたい。自分から選択肢を選べるくらいの実力をつけるのが、今の目標。約束を果たしてから、それから自分のことをしようって、俺はそう決めてるんだ」
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