挨拶

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 手入れは行き届いていて、墓石も周りもそこまで汚れてはいなかった。  二人で合掌をしてから、掃除をして、途中で買ったお供え用のお花を飾り、お菓子を置いた。お線香をあげて、手を合わせる。  千明は手を合わせてしばらく目を瞑っていた。きっと、いろいろなことを語りかけているんだろうなということは伺えた。 千明が目を開けると、私は疑問に投げかける。 「……千明のお母さんはどんな人だったの?」 「……長崎の病院で看護師をしてたんだ。そのとき親父と知り合って、既婚者だって知らずに恋愛関係になったらしい。  でも、不倫は不倫だから後ろめたくなって、別れたんだってさ。別れたときには、もう俺のこと妊娠してて、勤めてた病院はやめて、ここでずっと俺のこと育ててくれた。診療所で看護師として働いて、いつも患者さんに親切で、笑顔で対応して、辛い顔なんて見たことなかった。  俺が、池先生に憧れて医者になりたいって伝えてからは、お金が必要だからって夜は漁港の手伝いをしたり、スナックで働いたりして………。平気で無理するところ、誠と似てる。俺が立派な医者になれるように支えるからって、いつも笑顔でいってくれた……そういう人だな」  千明は懐かしそうに、まだ隣にいるように話をするので心が締め付けられて、思わず千明の手を取ってぎゅっと握った。
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