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自分のことのように喜んでいた。拓海は、ずっと見守ってくれていたらしい。千明のことをわかっていて寄り添える拓海は、きっと千明に必要な存在なのかもしれない。
「ふーん?」
面白い話を聞いたという意味で含みのある返事をする。
「あ、喋りすぎた……」
拓海は「やばいな…」と漏らして、お茶を一口飲んでいた。いいことを聞いて、私にとって実になる快気祝いの時間だった。
そうしてまた仕事に慣れてきた梅雨の日の夜。
一緒にご飯を食べていると、千明が決意した顔をして私に話しかけてきた。
「この家からは引っ越そうと思う」
「なんで?」
「ここは親父の購入した物件で、いつまでも住む気はもともとなかったんだ。もともと誠と約束した専攻医になるまでの期間が終わったら、俺もこの家から出ていくつもりだった。でも、二人でちゃんと生きていきたいから、ここじゃないところで暮らしたい」
「それは、違う部屋を借りてルームシェアするってこと?」
私がご飯を食べる手を止めてそう返事をすると、千明はため息を付いていた。これは、拓海が言っていた戸惑ってるときのやつだ。
「もうルームシェアって言葉じゃなくて、同棲だぞ。………お前、結婚とか視野にある?」
「考えたことないな……」
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