一人きりの補習

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  「う゛ー…あっつ。」   少女が机に頬を付け、手を前に伸ばし、至極ダレきった状態で呟く。     頬の下には『高1補習用課題【数学】』と銘打たれた真っ白なプリントが置いてあるのだが、その白には目もくれず、窓の外青い空に浮かぶ白く柔らかそうな雲ばかり見ていた。――俗に言う『入道雲』。 まさに暑い夏の代名詞、である。     「あっつーい…。」   煩い蝉の声に紛れ、目を閉じもう一度だけ呟くと、右手に持っていたシャーペンをカツンと音が立つくらい乱暴に机の上に叩きつけ、がばりと起き上がった。   「これじゃあ効率悪いっ!!だって暑いもんっ!!こんなにダレてるんだったら家でテキパキやった方がマシっ!補習少し休んだだけなのになんで!?こんなあっつい部屋に閉じこめて…酷いよこんな仕打ちっ!!いい加減終わらせろあのアホ教師ぃっ!!いつまで誰もいない教室で一人で勉強しなくちゃなんないの……ん?」     一人で叫び、一人で悪態をつき、一人で不満を言っていると今の自分の状況に気付いたようだった。     「教室に……一人?」     その口元に徐々にニヤリと如何にもよからぬ事を考えていると主張している不謹慎な笑みが浮かべられた。  
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