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英嗣の決意
夜の椎名不動産との懇親会。
俺は途中から場所を移動して、わざと柿崎君と隣り合わせで飲んだ。
香那は清水課長、木村らと女性だけで盛り上がっている。
彼は周りに人がいなくなるのを見計らってこの話をしてきた。
「この間、香那と一緒に駅前で見ましたよ。女性と一緒に乗るところ……」
「……それはもう解決した。酔っ払いを送っていっただけだ」
「香那のあのときの顔、見せてあげたかったですよ。真っ青になって可哀想に。椎名さんモテるそうですね。うちの課長もファンらしいですよ。香那は社内で大変でしょう」
「君はどういう立ち位置?悪いが、心配無用。香那のことは先々まで考えて大切にしていくつもりだ」
柿崎君は向こうに座っている香那のほうを見ながら答えた。
「……彼女の作ったキッチンの案は付き合っていたころから聞いていました」
「……そうか」
「彼女の夢です。結婚後の家庭の夢……俺はそれを聞いた時、実現できないかもしれないと彼女に言ったんです」
俺は驚いて彼を見た。あまりに悲痛な顔で何も言い返せなかった。
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