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「その時は冗談みたいに軽く返事をしました。彼女の夢もそこまで前から考えていたとは知らず……それ以降、彼女はどこか変わった。俺もそんな彼女に愛情が冷めてしまって別れた。やっとわかりました。彼女は……」
「香那は慎重だ。仕事ぶりを見るとよくわかる。自分のものにするまでに時間がかかり、それまでは弱くて自分に自信がない。だが、自分のものに出来たとき強くなる。そして、目標に向かって努力もできる」
柿崎君は酒を飲み干した。そして俺を見て言った。
「再会したとき、雰囲気が変わっていた。自立したんですね。大人になったし、綺麗になった。全部あなたがしたことですね?」
「……さあな」
「残念だ。あなたが女性とタクシーに乗り込む姿を見た香那の動揺ぶりを見てその時はチャンスだと思った。彼女との仕事に立候補し、会うたびに惹かれてやり直す機会を探っていた。でも、彼女はあなたしか見てない」
彼は俺の空いたグラスにビールを注ぐと、自分のグラスにも入れた。俺は彼の意図を察してグラスを持ち上げ彼に向けた。
「彼女の夢は俺が実現する。必ず幸せにすると約束するよ」
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