英嗣の決意

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 彼はグラスを合わせた。カチンと音がした。  「悔しいな。他の男なら負ける気がしなかったのに……」  「君も他の男よりはいい男だというのは俺もわかる。香那は目が高いな」  「ははは……そういうところが、勝てないんですよ。自分も含めてそういうなんて。そこまで言い切れる自信は俺にはありません」  「この仕事はまた成功するだろう。そう思わないか?」  「そうですね。あなたがうちの社長の息子さんであることを知る人が社内に最近増えてきました。この提携で知られたようですよ」  「……いいことばかりではないな」  「社長から少し聞いたんですが、義理の弟さんが入社しているそうですね。親族も役員とか……大変でしょう。こっちにいらしたらどうです?そのほうが居心地いいでしょうに……」  「居心地はどうだろう。そちらでも母の後釜を狙う人はいる。どこへいっても色々言われる立場だろうな。母は君にそんな話をしたのか……」  「どうしてかわかります?香那とのことを社長に話しましたから……」  「え?」
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