英嗣の決意

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 「母さん、言い過ぎだよ。掃除しなくても結果を見せれば他はついてくる」  「英嗣、一皮むけたわね。水川さんのお陰かしら?それとも柿崎君?」  俺は母さんを睨んだ。  「母さん。柿崎のことは、許すまで少しかかるからな。覚悟してくれ」  「へえ?こんなに提携がうまくいったのは柿崎君の力もかなりあるわよ。わかっているくせに……」  父は俺を見て笑っている。俺は深呼吸をして二人に向き合った。  「父さん、母さん。俺はどちらの会社でもふたりの力になれるように努力するよ。いつでも頼ってくれ」  二人は驚いて俺を見ると、破顔した。  「由奈。別れたときにこうなるとは思わなかったが、もう許してくれるか?」  「そうね。別れたから椎名不動産は私のものになっているのよ。あのままだったら、絶対に継げなかった。ふたつの道がこの子のお陰でひとつになるかもしれない。別れたけど、それなら諦められる」    時は流れ……翌年の春。    父の努力の結果、ようやく両社の資本提携が本決まりとなった。  義弟は大阪へ転勤予定だ。義弟の内示は直属上司の俺だ。ただ、特別に今回は父と社長室で一緒に話した。  
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