英嗣の決意

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 「お前の代わりを先にこちらへ異動させるから、発令後も二週間はこちら勤務にする。お前があちらに行くまでにはっきりさせるから待っていてくれ」  「……よくわかりませんが、待ってますよ」  俺は決心した。  香那はその頃、プロジェクトの成功を祝って親友の佐知と博士が食事に招待してくれたので出かけていた。  なんと、佐知は博士に告白して最近付き合いはじめたと報告を受けた。真っ赤な顔の佐知を見て、香那はあまりの彼女のかわいさに隣で抱きついてしまった。  「おめでとう、佐知。よかったね。博士、佐知のことお願いね。まあ、博士なら大丈夫か……」  「ああ、仲良くやっていくよ。仕事も一緒だし、喧嘩しないように気をつけないとな」  「そうね。一緒の時間が長いのはいいときもあれば悪いときもあるもんね」  「香那ったら、本部長とそういうことがあったの?」  思わぬ切り返しに、香那はうつむいてしまった。  「香那?」  「どうした?」  「……あ、ううん。会社の外では会えるからいいんだけど、会えないと噂を耳に入れてくれる人がいて、疑心暗鬼になるの」
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