英嗣の決意

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 「……私が相当頑固だったとばれた。昔はここまでとは知らなかったんじゃないかな。お互い様かもしれないけど。大人になってから会うと違う面が見えるからね」  「喧嘩別れしたわけじゃないでしょ?」  「うん。お互いをよく知る古い友達っていう感じ?」  「いいな、それ。理想じゃないか」  「博士の作った新しい鍋、すごくいいね。使っているお客さんからも褒められるよ」  「そうでしょ?私もいいと思ってた。よかったね」  博士が赤くなっているのを見て、佐知が顔色を変えた。  「……まだ、香那のこと好きなの?」  「……はあ?どうしてここでそんなこと言うんだ?お前、俺を信用してないのか?」  香那はお金を置いて立ち上がると、ふたりに言った。  「はいはい。邪魔者は消えますので、あとはおふたりでどうぞ。今日はありがとう」  「おい、お金はいいよ。お前のお祝いなのに……」  「ううん。少しだから、もらっておいて。足りないところは頼んでいい?」  「もちろんだよ。気を遣わせてごめん。またね、香那」  香那はふたりに手を振ると家へ帰っていった。  
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