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社長はうなずいて、手を上げた。
「水川さん。ご存じの通り、英嗣の母親とは離婚している。今の状況もおわかりかと思う。だが、水川さんという素晴らしい妻を得たんだ。英嗣の将来はより盤石になった。はっきり言っておく。俺は英嗣に跡を託したいと思っている」
「……父さん」
「英嗣の弟にあたる息子は大阪に転勤だ。妻と専務については、これを機にはっきりさせるつもりだ。息子のほうもそれで承知している」
やはり、英嗣さんから聞いていたとおりだった。
「英嗣。由奈には会ったのか?」
「いや。電話はしたが、これからだ」
社長はにっこり笑うと、電話をかけて秘書に何か言った。
すると、ノックの音がしてなんとお母様が入ってきた。
「え?母さん……」
「社長」
立ち上がった私を見て、お母様が前に来た。
「英嗣。水川さん。おめでとう。とても嬉しいわ。水川さん、英嗣をよろしくお願いします」
お母様は深々と頭を下げられた。私も頭を下げ返事をした。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「母さん、どうして?」
お母様はお父様を見てニヤリとして、席に座った。
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