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お父様もうなずいている。お二人は打ち合わせもあるというので私達はそれで失礼した。
「お父様とお母様。本当に仲がいいわね。やっぱりこれを見るからあのおばさんは嫉妬して手が出たんじゃないのかしら?」
私が彼に言うと、うなずいて笑った。
「確かにな。父さんは母さんを愛してる。再婚しなければよかったのかもしれないが、そんなことを言ったら弟が可哀想だ」
「……英嗣さん。離婚しないでね。喧嘩しても捨てないでね」
彼は立ち止まり、顔を覆って、うなだれた。
「馬鹿だな。お前に捨てられないように俺が気をつけないとな。父さんはそれを心配してたんだ」
「ええ?」
「香那。指輪しておけよ。外すなよ、いいな」
彼はそう言って、そこで別れた。本社と子会社は階が違うのだ。
指輪をしていたことで大騒ぎになり、本社でも社長が話してしまって婚約が大きな噂となった。
たくさんの人におめでとうと言われて、仕事にならない。
すると、英嗣さんから内線が入って、取締役室へ来て欲しいと言われた。
私は彼の部屋へ入ると、そこにはどこか彼に似た男性が座って、こちらをじっと見ていた。
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