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引き継ぎ
ああ、電話も鳴ってる。書類もたまってる。どうしたらいいの?
「香那ちゃん。大丈夫よ。とりあえず、電話に出ようか」
紗良先輩がにっこりしながらこちらを見る。
私は息をのんで、電話に出た。
「はい。こちらHARUNA商品開発部です。あ、お世話様です。はい、はい。お待ちくださいませ」
紗良先輩がこちらを見てる。
「あ、あの。スズキ鋳物さんです。B-51型のフライパンの新しい持ち手のことで質問があるそうで……」
「わかった。私に回して」
すぐに先輩の内線に繋ぐ。
「お電話代わりました。吉崎です。はい。あ、それでしたら……」
格好いいな。先輩みたいにいつになったら私はなれるのかな。なんとなくだけど、何年いてもなれないような気がする。
だって、覚えが悪いのよね。一生懸命何度読んでも覚えられないの。あと、型番って数字の羅列。似ていてよくわかんない。
ため息をついていたら、先輩が電話を置いて、こちらを見た。
「香那ちゃん。大丈夫だよ。電話はもう大丈夫だし、後は書類やれば乗り切れる。そんな顔しないの」
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