第二章

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翌日、朝からお腹が痛かった。学校を休みたいと母に訴えたが、怠けるなと一蹴されてしまって、トボトボと登校した。  朝から酷い雨だ。いっそのこと、大雨で電車が止まればいいのに。  とりあえず目立たない空気のように過ごすことを目標に、午前中の授業をこなす。席から離れると持ち物が神隠しに遭う可能性が高いので、トイレは限界まで我慢した。行きたくなったらダッシュで行って、席に戻る。  お昼休み、昨日と同じように自分の居場所はなかった。完全に莉奈のグループから排除されたと確信する。 またトイレで食べようかと考えたが、惨めさが過ってやめた。 それに、長い時間席を離れるのも怖い。席で弁当箱を開く。  弁当を食べはじめた京香を見て、真理子がヒソヒソ言い始める。真理子と彩実は他のグループの女子にも喋りかけにいっていた。 二人から何かを告げられた地味そうなグループの女子が京香を見る。気にせずに食べていたら、食べ方を真似された。クスクスと女子達が笑う。  耐えられない。お弁当を持って京香は教室を飛び出した。 結局また三階のトイレで弁当を食べる。 教室に戻ると椅子はちゃんとあった。かわりに筆箱がなくなっていた。 ゴミ箱を見ると、自分の筆箱がゴミに埋もれていた。泣きそうになるが、まだマシな方だと涙を堪える。  放課後になった。やっと、学校という檻から解放される。 京香が急いで鞄に教科書を詰めていると、莉奈が近付いてきた。  莉奈はいじめの首謀者でも実行犯でもない。とはいえ、真理子と彩実の親友だから要注意だ。 「ねえ、京香」 「な、なに?」  警戒した目を向ける京香に、莉奈が屈託のない笑みを向ける。 「明日は土曜だし、明後日から合宿でしょ。せっかくだし、みんなでカラオケ行かない?」  このタイミングで誘いに迂闊に乗るのは危険だ。 頭で理解していたけど、真理子や彩実にまで笑顔で「おいでよ」と誘われて、嬉しくなった。それほどまでに、孤独は辛かった。 篝と仲良くした制裁でちょっとした意地悪をされただけで、まだ自分は彼女達の仲間なのだ。きっと制裁が終わって、元通りに戻れるのだ。 京香は都合良い解釈で自分を納得させる。 「いいよ、行こう」  悪魔が微笑んでいるのにも気付かず、愚かにも京香は罠に飛び込んでしまった。
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