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たっちゃんは小学二年生のときにあたしの家の隣に越してきた。肌が白くて背の低い、大人しい男の子だ。消極的な性格が外見にまで現れていて、はじめて会った時に暗そうな子だと思ったのを覚えている。親の仲が良くてあたしもたっちゃんも一人っ子だったから、あたしたちはよく二人で遊んだ。
女男。
男の子たちはたっちゃんのことをそうやって呼んだ。たっちゃんは泣き虫で気が弱くて、ちょっと女の子っぽかったから。そういう子って、昔からからかいの対象になるものでしょ? 男の子たちは、ことあるごとにたっちゃんを女男と言っていじめた。感情的で気が強かったあたしは、たっちゃんをいじめる男の子たちを片っ端からやっつけた。殴って、蹴って、髪引っ張って――今思えば、あんまり褒められたことじゃないかもね。乱暴で、がさつで、全然女の子らしくなかったし。
男女。
だからあたしは、いつからかそうやって呼ばれるようになった。女男と男女。似ているようで、まるで正反対のあだ名。あたしは男女ってあだ名がそんなに嫌じゃなかったけど、たっちゃんは女男って呼ばれるのを極端に嫌がった。泣いて泣いて、イヤだと言った。
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