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「ああ、会ったことはないけど、いろいろ噂を聞いたことがあんだ」
今度は、噂。嫌な気しかしない。宇野も、他の男子達みたいにたっちゃんを見るの? たっちゃんの性別をからかって、気持ち悪いって否定するの? そんなの、たっちゃんがかわいそうだ。たっちゃんはいつだって、真っ直ぐに人を好きなのに、男に産まれたか女に産まれたかだけで、その全てが否定されるなんて。
そうだ、こいつがたっちゃんをどう思っているか、あたしが今ここで確かめてみようか。そう思いつき、あたしは宇野の言葉を待ってみる。
たっちゃんのためだ。たっちゃんが、後から宇野の本性を知って傷つかないためだ。今まで、たっちゃんが好きになった男の子は皆、たっちゃんを傷つけてきた。良い人だと思ってたのに、たっちゃんの身体が男の子だったから、誰一人たっちゃんを受け入れてくれなかった。きっとこれからもそうなんだろう。宇野だって、そうなんだろう。あたしはそうあってほしい。たっちゃんと誰かが結ばれてほしくないから。あたしはまだ、子どもで、自分勝手なままだ。ほんと嫌になる。
「森って、男なのに女の格好してるんだろ? 髪伸ばしたり、スカート履いたりさ」
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