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『指輪は彩萌さんが持つべきだもの』
あっさり言われ、瑛さんと義両親にも私が保管するよう諭された。
ただ瑛さんは、将来的には私の手から離れていくのがどうも気になっていたらしい。
「俺は俺の気持ちとして、彩萌だけの婚約指輪を贈りたい」
真剣な眼差しを向けられ、息を呑んだ。
「……期限や形式も決まっていて、きっと彩萌の望む婚約や結婚式のかたちではなかったと思う。だからせめて今だけ、出会って間もない頃に戻ったつもりで聞いてくれないか?」
瑛さんが、そっと私の左手を長い指で握る。
「彩萌以上にそばにいてほしいと、ともに生きていきたいと願った人はひとりもいない。どうか俺の人生でひとつの我がままを聞き入れてくれないか?」
「瑛、さん……」
「……心から愛している。愛する人がいる日々がこれほど幸福だとは知らなかった」
呼吸が、止まった気がした。
今、泣きたくないのにゆらゆらと視界が滲み始める。
指先は緊張しているのか、冷えている。
なのに頬が、胸の奥が、燃えるように熱い。
「契約も条件も関係なく、俺とこれから先もずっと夫婦でいてほしい」
まるで懇願するかのように、言葉を紡ぐ。
真剣さが十分に伝わり、胸がいっぱいになった。
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