2.運命≠必然

5/15
前へ
/174ページ
次へ
『彩萌はいちいち、相手の反応を気にしすぎよ。自分の思うように行動してぶつかればいいのに。喧嘩が嫌なの?』 別れを報告した直後、親友に言われた言葉は今も記憶に残っている。 喧嘩が、ではなく感情的にぶつかるのが苦手なので、最初から一歩引いてしまう。 想いをむき出しにしてまで手に入れたいと願う恋心なんて、わからない。 自分の過去の恋愛を思い出し、ため息を吐く。 買い出しなので、デニムパンツにざっくりした白のサマーニットという楽な装いを選ぶ。 もちろん指輪もきちんとバッグに入れて、家を出た。 マンションのエントランスを通り抜けたとき、背後から声をかけられた。 「新保(にいほ)彩萌さんですか?」 「は……い」 反射的に返事をし振り返ると、驚くほど整った面差しの男性が立っていた。 意思の強そうな眉と左右対称の綺麗な切れ長の二重の目、高い鼻梁が目を引く。 長めの艶やかな黒い前髪が小さな顔にかかり、薄い唇から白い歯がのぞいている。 しかも長身で驚くほど手足が長い。 身長百六十センチの私より頭ひとつ分以上高いこの人は、きっと百八十センチを超えているだろう。 「申し訳ないが、今から一緒に来ていただきたい」 「え?」 言葉遣いは丁寧だが、断るのは許さないと言わんばかりの強い視線にたじろぐ。 「あの、失礼ですがどなたかとお間違えでは?」
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4684人が本棚に入れています
本棚に追加