2.運命≠必然

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「う……そ……本物?」 この人が噂の、御曹司? 「嘘じゃない。信じられないなら検索でもなんでもしてみろ」 有無を言わさぬ強い口調に圧倒され、震える指でバッグからスマートフォンを取り出す。 もたもたと検索している間、文句こそ口にはしなかったが、彼の鋭い視線は外れなかった。 梁瀬地所のホームページを検索すると、眼前の男性と瓜ニつの写真が映し出された。 ひゅっと息を呑む。 親会社の経営者一族の容貌をチェックしておけばよかった。 後悔先に立たずとはよく言ったものだ。 「あ、の……」 こういうとき、なんて声をかけるべきなの? 「わかったなら、一緒に来てもらおうか」 私の躊躇いをまるっと無視した梁瀬社長が、低い声で言い放つ。 一緒にって……どこに?   「説明はあとでする」 にこりともせずに告げ、サッと私の腕を取った。 状況が理解できずにいる私を、停めてあった車に誘導する。 「乗って」 助手席の扉が開けられ、半ば強引に押し込まれる。 「ち、ちょっと、待って……!」 「こちらの用件が済んだらきちんと送り届ける。心配するな」 「そうじゃなくて……!」 こんなの、まるで拉致じゃないの! 喉元まで出かかった声は、鋭い眼差しに押し返される。 名の知れた大企業の社長が、子会社の一般市民に危害を加えたりはしないだろう。 それでも怖い。
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