2.運命≠必然

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「本当に……帰してくださるんですよね?」 ギュッと車内でバッグを握りしめ、尋ねる。 私の態度に、彼は一瞬驚いたように片眉を上げた。 「……へえ、一応警戒心はあるのか。俺に誘われて困るなんて……益々面白いな、お前」 面白い?  なにが? ハンドルを握り、白い歯を見せる姿を無言で睨みつける。 「俺相手にそんな態度をとる女は初めてだ。里帆(りほ)の言う通りなのが癪だな」 「なにを言って……?」 ほんの少し馬鹿にされたように感じ、問い返す。 すると、骨ばった指が私の首筋付近に触れ、梁瀬社長が少し身を乗り出してくる。 まさか、キス、される……? 思わず肩を竦めてギュッと目を瞑ると、カチッと軽快な音がした。 「シートベルト、ちゃんとしろ」 「え、あ……」 恥ずかしい……! とんだ勘違いに、頬が一気に熱をもつ。 「キスされるとでも思ったか?」 クスクスと楽しげな声を漏らす姿を直視できず、頬が熱くなる。 先ほどからなにかを口にするたびに墓穴を掘っている気がする。 もう、目的地に到着するまでなにも話さずにいようと決め、うつむく。 「……やっぱり面白いな、お前。気に入った」 この短い間に何度面白いと言われただろう。 まったく意味がわからない。
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