4716人が本棚に入れています
本棚に追加
「……返事をくれるか? この指輪をお前にはめたいんだ」
綺麗な二重の目が少し不安そうに揺れている。
今でもたまに見惚れそうになる端正な面差しを、真っ直ぐに見つめ返す。
なにもかも完璧で優秀すぎるこの人に望まれるなんて、夢のようなのに。
私のほうこそ、ずっと一緒にいてとお願いしたい。
伝えたい想いはたくさんあるのに、心が震えてうまく声が出ない。
あふれ出る恋心は、こらえきれなくなった涙とともにこぼれ落ちる。
「彩萌?」
彼が名前を呼んでくれるのが好きだ。
抱きしめてくれる腕も、少し高めの体温も、本当は少し寝起きが悪いところも、なにもかもすべてが愛しい。
出会えたのが幸せなのは、きっと私のほうだ。
「……泣くな」
キスで涙を拭ってくれる仕草に、どれだけ心を揺さぶられているか、あなたは知らないでしょう?
「あなたを、愛してる……これからもずっと、一緒にいてください」
必死に押し出した声は掠れている。
けれど彼は鮮やかな笑顔を向けてくれた。
ああもう、“愛している”以上の気持ちを表現する言葉はないのだろうか?
私の左手薬指に輝く指輪をはめてくれた彼が、指に口づける。
愛しさと切なさがまざって、涙が止まらない。
最初のコメントを投稿しよう!