1.夢見る結婚式

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ヒマワリが太陽に向かって咲き誇る今日、私は梁瀬(やなせ)(えい)の妻になった。 百八十センチを超える長身に銀色のフロックコートを身にまとった、世界にその名を轟かせる梁瀬グループの御曹司。 そんな人が夫になるなんて、今も信じられない。 見惚れそうになる美麗な面差しには、柔和な微笑みが絶えず浮かんでいる。 けれどその温かさは、傍らに立つ私には一度だって向けられない。 「……きちんと笑えないのか?」 冷たい声が耳元近くで響く。 無理を言わないで、と心の中だけで強く反論する。 広すぎる披露宴会場の招待客のテーブルを回る足は、最初からずっと震えたままだ。 「自分の結婚式だぞ、もっと幸せそうな顔をしろ」 不機嫌な声を発して、私の腰を支える指に力を込める。 幸せ?  見世物になるだけの、豪華で煌びやかなこの結婚式が? 手が届く人ではないと、分不相応だと重々理解していた。 私が花嫁に選ばれた理由はしきたりに逆らえないから、ただそれだけ。 この一大イベントを、彼がどれほど疎ましく感じているかも知っている。 自分が微塵も望まれていない、愛されない花嫁だってよくわかっている。 生涯花婿には味方になってもらえないことも。 全部の事情を呑み込んだはずなのに。 心の奥底に分厚い蓋をして隠した恋心は、勝手にヒリヒリ痛み始める。
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