2.運命≠必然

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「これが、あなたの条件……?」 掠れた声で問いかけると、大きくうなずく。 「契約結婚だと思ってくれて構わない。俺がお前を愛することはないだろうが、不貞を働くつもりはない」 愛さないと宣告され、なぜか胸が軋む。 結婚はいつかしたいと願っていた。 大それた夢や理想を抱いていたわけじゃない。 玉の輿になんて興味もなかった。 愛する人と幸せで温かな家庭を築きたい、それだけだったのに。 「返事を」 答えを急がされ、なにもかも納得がいかず憤る。 私は彼が梁瀬の後継者として力をもつための駒でしかない。 「考えさせて、ください」 理性を総動員させ、冷静な声を出す。 「なぜ?」 片眉を上げハンドルに頬杖をつく、そんな仕草すら様になるのが腹立たしい。 「なにが不満だ?」 「不満以前の問題です。一生に関わる判断を勢いではできません」 「時間がない。問答無用で花嫁になるところをわざわざ譲歩しているんだぞ? 早く判断しろ」 キツイ視線と口調に怯みそうになる。 なんて最悪な求婚。 その後も何度か時間をほしいと伝えたが、彼はいっこうに聞く耳をもたなかった。 「とにかく今日は無理です! 私は今から交番に行きたいんです」 「は? 交番?」 怪訝な表情を浮かべる彼に、帰る口実ができたとばかりに指輪の件を手短に話した。 ところが私の話を聞くにつれ、彼の眉間の皺が深くなっていく。 「その指輪、見せろ」 「どうしてですか?」 「いいから、早く」 強い口調に抗えず、バッグから渋々取り出して見せる。 すると彼はそれを長い指でつまみ、至近距離で眺めた。 そして、なぜかハハッと楽しげな声を上げ、空いている手で長めの前髪をかき上げた。 強い光を放つ綺麗な二重の目に、心がざわめく。
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