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3.「俺の花嫁はお前だけだ」
梁瀬社長が運転する車が立派な門扉をくぐる。
都心とは思えない広大な敷地に圧倒される。
視界の先に大きな洋館が見えた。
きっとあの風格漂う建物が梁瀬本家だろう。
観光名所になるのもうなずける。
「二度目になるが、車から降りたら絶対に気を抜くな。誰になにを言われても聞き流せ」
速度を落とし、前を見据えたまま淡々と告げる。
これほど警戒するなんて、本家とはいったいどういう場所なのだろう?
「お前、本当に考えが顔に出るな」
ため息交じりの声に、慌てて梁瀬社長に向き直る。
「今、本家はどんなところなのか、危険なのかとか考えてただろ?」
「な、なんで、わかるんですか?」
「……とにかくお前はなにも話すな。説明はすべて俺がする。特に今日は、厄介な分家の人間ばかりが集まっているからな」
「でも、梁瀬社長のご両親もいらっしゃるんですよね?」
「瑛」
彼が無愛想に口を挟む。
正面玄関らしき場所を通り過ぎ、離れのような落ち着いた雰囲気の家屋の前で彼が車を停めた。
周囲には木々が生い茂り、人目をうまく隠している。
「お前は俺の婚約者だ。きちんと名前で呼べ」
先ほどとは比較にならない強引さにたじろぐ。
確かに夫婦になるのに役職名で呼ぶのは不自然だ。
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