3.「俺の花嫁はお前だけだ」

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私、絶対に場違いよね……。 「いくら急ぎだったとはいえ、こんな突然……新保さんに失礼でしょう。息子が無粋な真似をしてごめんなさいね。初めまして、瑛の母です」 訪問着を上品に着こなした、小柄な女性に話しかけられる。 「新保彩萌と申します。急にお邪魔いたしまして申し訳ありません」 頭を下げる私に、降り注ぐ視線が怖い。 「どうぞ顔を上げて。かしこまる必要はありません。よく来てくださったわ」 恐る恐る頭を上げると、これまた父親と似たような笑顔で見つめられた。 さらには全身に一瞬だけ視線が向けられ、自分の装いを思い出す。 ……どう考えても結婚相手の自宅を初めて訪問する服装ではない。 間違いなくおふたりは気分を害されているだろう。 立場のある方々なので口にだされないだけで。 もちろん、夫となる人が弁明など引き受けてくれるはずもない。 経緯を自分自身で釈明すべき?  それとも素直に謝罪したほうがいい? 頭の中に湧き上がる、幾つもの選択肢に混乱する。 手にはじっとりと嫌な汗が滲んでいる。 きっと瑛さんに繋がれた手も汗ばんでいるだろうが、今はそれどころじゃない。 「――失礼ですけど、奥様。私たちにもご紹介いただけませんか?」 上座にほど近い席に腰かけた、五十代くらいの和装姿の女性が声を上げた。 糸のような細い目が特徴的だ。 「いったい、どちらのお家の方かしら?」 「会合にあんな姿で来るなんて、まったく礼儀がなっていない!」 女性の声を皮切りに、さざ波のように声が広がっていく。
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