3.「俺の花嫁はお前だけだ」

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「少し、下がったな」 「心配していただいて、すみません。あの、もしかしてずっと看病を……?」 今は何時頃なのだろう?  大きな窓にはブラインドが下ろされていて、外の状況がわからない。 「……紹介が必要だったとはいえ、ひどい目にあわせて悪かった。医者からは過度のストレスと疲労による発熱と言われている。元々体が疲れていたところに大きな負荷がかかったんだ。無理せず今は休め」 「そう、ですか……ありがとうございます。治療費をお支払いします」 「必要ない。婚約者の看病をするのは当然だ」 きっぱり言い切られ、驚く。 「どうした?」 「いえ、あれだけ反対されたのに……いいのかと」 「あの場にいたのは梁瀬本家の人間と力のある分家の家長たちで、自分たちの利益しか考えていない連中ばかりだ。自身の娘と俺をどうやって結婚させよう、とかな」 とんでもない話に、思わず眉間に皺が寄る。 「お前は俺に守られていればいい」 フッと口元に弧を描いて、私の前髪をそっとかき上げる。 強い口調とは対照的な、優しい触れ方に心が揺れ動く。 ……本気で守ろうとしてくれているの?  一族の大半が反対しているのに? 胸の奥が燃えるように熱い。 泣きたくなるような、胸が痛むような、この感情はなに? 「今は体を治すことだけ、考えろ。なにか食べられそうか?」 問われた瞬間、きゅうっとお腹が小さな音を立てた。 ……恥ずかしい! 頬が一気に火照る。 羞恥でギュッと目を瞑ると、ポンポンと頭が撫でられた。
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