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一瞬の触れ合いの後、瑛さんはゆっくりと綺麗な顔を傾ける。
二回目のキスは上唇を甘噛みされ、まるで形を確認されているようだった。
「……んっ……」
角度を変えて繰り返される長い口づけに、鼓動がどんどん高鳴っていく。
思わずギュッと彼の胸元に置いた手を握りしめると、瑛さんが唇を解放した。
自身の唇の端を親指で拭う妖艶な姿に、胸が痛いほど疼く。
「……歯止めがきかなくなりそうだ」
「なんで、急にキス……!」
動揺を誤魔化すように強い口調で問うと、平然と返される。
「お前は俺の妻になるんだ。触れ合うのは当たり前だろう?」
甘さの欠片もない傲慢な口調に、先ほどまで感じていたどこか優しい空気が霧散する。
心の中が氷塊を埋め込まれたように一気に凍りついていく。
……そうだ、私たちは契約結婚をする。
後継者を産むのは、条件。
そのために抱かれなければならない。
恋愛感情のような甘いものは存在しない。
わかっているのに、なぜこんなに胸がヒリヒリするの?
瑛さんのシャツを握ったままの指から、力が抜けていく。
彼の姿を見たくなくてうつむく。
「……どうした? 起きているのがつらいか?」
私の唐突な態度の変化に、体調が悪くなったのかと勘違いした瑛さんが尋ねてくる。
「週明けも調子が戻らないようなら無理するな。とりあえず、自分の部屋から持ってきたいものはあるか? それとも全部運ぶか?」
「……ええと、なんの話ですか?」
理解に苦しむ発言に、思わず顔を上げる。
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