3.「俺の花嫁はお前だけだ」

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「引っ越しだ。最短で荷物を運ぶとなると……明日か明後日か」 独り言ちながら、スマートフォンを取り出し、傍らで操作する。 「ちょ、ちょっと待ってください。そんな急に……せめて入籍するまで同居しなくても……」 「ダメだ」 間髪入れず、却下される。 「親戚連中の態度を見ただろ? お前を倒れるほど糾弾するような奴らだ。万が一の事態を回避するためにも俺といろ。婚約者なのにともに暮らしていないのかと疑われる可能性だってあるんだ」 「じゃあ、朝霞さんとも一緒に暮らしていたんですか?」 私の反撃に、彼は片眉を上げる。 「里帆は実家暮らしだ」 「だったら」 「お前と里帆は違う」 きっぱり言い切られ、下を向き唇を噛む。 なにが、違うの? 私は契約結婚の相手だから? 「……噛むな」 スッと伸ばされた指が、唇に優しく触れる。 「癖か? 傷になるからやめろ」 ゆっくり視線を上に向けると、彼が渋面を浮かべていた。 「気に入らない出来事や言いたいことは、言えばいい。全部とはいかないが極力聞いてやる。本家でも噛んでただろ?」 「あれは……」 「なんだ?」 思いがけない優しさに焦る私を促す。 「た、助けてくださるなら、もっと早くしてほしかっただけです!」 「親戚連中の反応を見る必要があったんだ。……悪かった」 思いの外素直な謝罪に、面喰う。
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