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4.愛のない同棲開始
翌朝目が覚めると、熱はすっかり下がっていた。
急激な変化に体が驚いただけだったのかもしれない。
ブラインドの隙間から漏れる光を頼りに起きようとすると、すぐ隣に温かな体温を感じた。
不思議に思って体を反転させると、至近距離に整いすぎた面差しが迫る。
驚きで悲鳴が漏れそうになるのを両手を口に当て、必死でこらえた。
微かな寝息を耳にして、ホッと胸を撫でおろす。
長いまつ毛が頬に微かな影を作り、肌は陶磁器のようできめも細かそうだ。
完璧なパーツと配置バランスに、思わず見惚れてしまう。
「もしかして、ずっと付き添って……?」
言わずと知れた大企業の責任者である彼は、毎日多忙だろう。
それなのに、時間を割いてくれている。
うっすら隈があるのは見間違いじゃないはずだ。
冷たく突き放されたと思ったのに。
なんで優しくするの?
胸の奥がきゅうっと締めつけられ、馴染みのない痛みに困惑する。
そっと指を伸ばして、隈に触れる。
「親切にしてくださり、ありがとうございます」
肌に触れた指先がじんわりと熱をもつ。
「……本当のあなたはどんな人、ですか? このお礼は、どうしたらいいでしょう?」
眠っているのをいいことに、心に浮かぶままつぶやく。
目元にかかる長めの彼の前髪をよけようと屈んで手を伸ばした途端、手首が大きな手に掴まれた。
そのままもう片方の手が私の頬に伸ばされる。
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