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「……俺たちは夫婦になったんだ。できないことはきちんと言え」
つぶやいて、再び私の体を反転させる。
「すみません……あ、ありがとうございます」
背中はむき出し、抱えているドレスが落ちたら下着姿、というあられもない状態が恥ずかしい。
うつむいて礼を告げると、長い指に顎を掬われた。
至近距離に迫る美麗な面差しに、鼓動が一気に暴れだす。
「敬語に戻ってる」
吐息が触れそうな距離で指摘され、口づけられた。
強引な仕草とは裏腹に、触れる唇はとても優しい。
あやすように上唇、下唇を順に甘噛みされ、最後にもう一度しっかり唇を重ねた後、顎から指を外す。
「体を冷やすな」
そう言い残して、彼がバスルームから出て行くと、力が抜け、床に座り込んでしまった。
その後、なんとか入浴を終えた私と交替で、彼がバスルームに向かった。
緊張をほぐそうと、着替えたドレスをクローゼットにかけ、皺をのばす。
さらに窓から見える綺麗な夜景に無理やり意識を向ける。
けれどまったく効果はなく、身に着けたバスローブの襟元をギュッと強く握りしめた。
結婚が決まり、同棲が始まった当初から何度もキスをされ、全身に触れられているのに。
そのたびに、戸惑い、緊張し、切なさに涙をこぼしてばかりだ。
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