背中

1/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
陽が沈む真っ赤な夕焼けを前に その人の背中はとても寂しげに見えた。 ひとけのない公園のベンチに一人 ポツンと座る女性。 真っ白なワンピースが細い身体に とてもよく似合っている。 時折、前屈みになって肩を震わせる。 かすかに嗚咽が聞こえた気がした。 失恋でもしたのだろうか。 その姿はつらそうで、儚げで、 なぜか僕は知りもしないその女性の 震える肩を抱きしめたい衝動にかられる。 僕がこの公園についた時には 女性はもう、そこにいた。 夏の暑さはすっかり姿を隠し、 夕方の公園はとても過ごしやすい。 すこし涼しいくらいだ。 コンビニでホットコーヒーを買い、 この公園で飲んでから帰るのが 最近の僕の楽しみになっていた。 受験勉強の息抜きってとこかな。 特等席をとられた僕は ちょっと離れたベンチで 後ろから見つめる形で座っていた。 半袖のシャツから伸びた腕に 急に吹いた冷たい風が触れる。 「寒っ」 そろそろ冬の制服に衣替えしようかな。 色々と考えを巡らせながら 最後の一滴を飲み干し、僕は立ち上がる。 『ちょっと、顔を見てみたかったな』 後ろ姿から漂う雰囲気で、 なんとなく、美しい女性な気がする。 後ろ髪引かれる思いで、 僕はその場を立ち去った。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!