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公園を出るところで、振り返ってみる。
女性は、さっきと全く変わらない姿勢で
うつむいていた。
急に、厭な予感がして不安になった。
ベンチの向こう側は崖になっていて、
その下には線路がある。
フェンスがあるものの、
大人なら簡単に飛び越えられる高さだ。
このまま帰っていいのだろうか。
一声、かけた方が良いのではないか。
すこし考えてから、くるりと
来た道を戻り始めた。
『ただ一言、大丈夫ですか?と
声をかけるだけさ』
ほんのりある下心をごまかすように
心のなかで呟く。
女性に近づくにつれ、
嗚咽がしっかりと聞こえてきた。
肩が激しく震えているのがわかる。
『ん……?』
もうすぐ目の前というところまで来て
違和感を感じた僕の目に
彼女の手元がはっきりと見えてきた。
手にしているのはコメディ漫画だった。
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