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『はっ!はっ!はっ!』
深夜の街を全力で駆けて、“何者”かから逃げる青年。
彼の顔や体、衣服には誰のものかべったりとへばり付いた血液。それが何を意味するか。
「この辺もだいぶ復興したよなぁ~!十年前の惨劇が嘘のようだぜ」
そんなことを逃げる青年の背中に投げ掛けながら、徒歩で追う喪服のように真っ黒なスーツを身に纏った男。
『ひぃ!!』
青年はその男に対して異常な警戒と恐怖を持つ。
冷や汗を掻きながら全力疾走にも関わらず、どんどんと徒歩の男と距離が詰められていく。
「お前らのせいで“食人事件”は増えていく一方だ。
それなのにも関わらず綺麗事大好きな賛成派はお前らの事を人間として扱おうとする。
狂乱れた話だよな。一度人間味を覚えた餓える怪物を前にして、果たして奴等は同じ台詞が吐けるのか。
本当につくづく嫌になるよ。屠殺を嫌っておいて肉を喰らう偽善者と同じだ。
お前らも賛成派の人間も俺からすりゃあ駆除対象だっつうのによ」
『来るなぁぁぁあ!!!』
青年の悲痛な叫びは誰の耳にも届かず、暗闇に溶けていく。
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