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長い間、俺は野良猫だった。
果てしなく続く自由な時の海に、ぷかぷかと浮かんで朝も夜も漂い続けていた。
それは幸せでも不幸でもない、苦しくも楽しくもない、ぼんやりとした時間だった。
いつからか寝起きしている、この場所はいつも風だけが吹いている。
たくさんの人や車が行き交う道路から隔離された、この場所を通る人影はまばらで、どこで眠ってしまっても、いつまで眠っても、何一つ変わっていない。
すべてのものが灰色に塗り固められた動かない絵画のような風景の中に溶け込んでしまった俺の心は、何も求めてはいなかった。
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