化け猫 

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毎日のように、玲詩は俺の居場所を通って仕事に通っていた。 あれ以来、彼の足音はいつも平穏だった。 それが・・・ それは唐突だった。 玲詩の足音と重なって歩く、もう一つの足音があった。 なんとなく懐かしいヒールの音。 目の前に現れたのは玲詩と連れ立った福田裕美だった。 『コイツ、僕の友人さ。えっ?名前?名前なんて必要ないんだ。僕らは魂で通じ合っているからね。な、そうだよな。僕、結婚したんだ。紹介する。僕の奥さん、裕美さんって言います。僕が本当に辛い時、心から僕を支えてくれたのは、おまえと・・・裕美さんだった』 496ff6f3-d6f5-481d-a949-96a0af612ed5 俺は起き上がって、彼らの幸福を祈った。 もしかするとノーベル賞より、こっちの方が嬉しいくらいだ。 それ以来、朝も夕方も、毎日仲良く響いてくる二人の靴音を聞くと、俺まで幸せな気分に浸ることができる。
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